カラスからカピバラへの道
個人的な話で恐縮ですが、今年の前半まで、私は温泉苦手を自認しておりました。自宅のお風呂では、髪と身体を洗えば満足で、湯舟には浸かっていましたが、ま、カラスの行水。カラス的には、わざわざ外に出かけていってまでお湯に浸からなくてもねぇ。帰ってくるうちに湯冷めするでしょ! それに加えて3歳からずっと内風呂育ちなので、大勢でお風呂に入るのは、ポッコリお腹を見られるだけでも恥ずかしいと思っていたのでありました。
3歳からずっとと言いましたが、実は3歳までは銭湯に行っていました。あれは柚子湯……、だから12月だと思うのですが、銭湯にも柚子が浮かべられます。誰と銭湯に行っていたかの記憶はありませんが、2歳半ぐらいですから、たぶん母親でしょう。銭湯には温度はぬるめで広くて浅い浴槽と、熱めの深い浴槽が並んでいて、深い浴槽の横の扉が開いて大量の柚子が投入されたのを鮮明に覚えています。
なぜ、鮮明かといいますと、柚子が投入された瞬間、監視の目をかいくぐって2歳半は深い浴槽に突進。結果は、熱くて深い浴槽でおぼれるハメに陥ったのでした。記憶はそこまでしかありません。たぶん、その辺のオトナに助けられたのでしょう、いまでも生きているんだから。私が産まれ、ちょっとだけ育った地域は、バリバリの下町なので、銭湯中おせっかいなオバサンたちばっかりだったに違いありません。ただ、引き上げられた2歳児には銭湯がトラウマになり、広くて熱いお風呂が怖いといいますか……。
前置きが長くなりましたが、そんなわけで温泉旅行にはほとんど行ったことはありませんし、仲間と山菜摘みやきのこ採りに行った帰りに日帰り温泉に立ち寄っても、私だけは温泉に入らないという感じでした。それは、お湯に浸かると眠くなるので、いつも運転手をおおせつかっていた私は、危険を察知!(笑)ということもあったのですが、みんなが温泉、温泉と騒ぐ中、入れないことをちっとも残念に思えなかったほどに温泉苦手であったわけです。
それがひょんなことから、湯めぐりにかかわるようになり、最初は普通に取材という感じでいくつかの温泉に行ってみたのですが、数ヵ月後にはどっぷり肩まで湯に浸かっていました! 自己イメージとしては、アヒルのおもちゃを抱いてお湯に浸かっているカピバラになったような(笑) カラスにとっては、5分間、湯に浸かっているのは、けっこうな苦行でした。とにかく私より前から入っていた人より先には出ないぞ! せっかく来たのだから1時間は入るぞ!と自己規制をかけ、必死で浸かっていたような気がします。それが、あれ~? 誰よりも長く浸かっているようになり、気がつくと2時間ぐらい温泉にいるという人間に変身してしまったのです。
それからは、毎週どころか、へたをすると週に2回も3回も日帰り温泉を荒らしまくる湯めぐり人になっています。あ、ひょっとして、私も立派な日本人だった?(笑) 来年もせっせと湯めぐりしそうな予感。
にわかカピバラ、温泉評価基準
にわか湯めぐり人にとっては、☆をいくつつけたらいいのかは、まったく悩みのタネです。経験が少ない分、気持ちがいい温泉だなぁと思えば5☆くらい平気でつけたくなってしまいます。ひぇ~、こりゃないよなぁ~と思っても、いやいやこれが普通ってものなのかも、だとすれば、☆3つ? いや普通以下なら☆2つ? 1つ? ☆なしっていうのもありかな? などと、独断と偏見に満ちたレポートではあっても、それなりに独断も難しいものです。
今年、はじめて湯めぐり人に加わった私であります。本当はあちこち行って、いろいろ経験をして、ちゃんとした独断と偏見をもたなければいけないなと思いつつ、結局、同じところに何度も行くという愚挙を繰り返しております。なぜかといえば、湯「めぐり」ではなく、湯「楽しみ」になっちゃっているからかもしれません。湯を楽しむために重要なことは何か? 1番はアクセスだと思うんですよねぇ。
行きやすい、これが大事。電車で近い、駅から近い、クルマで近い、そんなに近くないけど道路が空いてて行きやすい、などなど。わざわざ温泉に行こうとするときと、寄り道的に湯につかってくるときでも選ぶ温泉は違ってきます。クルマで出かける用事があったときは、目的地から帰宅するまでのルートに近いところに立ち寄ったり、電車だと途中下車のようなことも。去年はまったく考えられなかったことですが、クルマにはいつも「お風呂セット」が積んであるし、それでなくてもいろんなものがごちゃごちゃ入っているバッグに、タオルが1枚忍び込ませてあったりします(笑)
電車からのアクセスが悪いところは、たいていの温泉が無料送迎バスというのを走らせているようです。複数の駅にバスを出している温泉もあって、うまく利用すれば便利だなと思うのですが、たいていは1時間に1本ぐらいのタイムスケジュールなので、時間を調べてから行かないとけっこう待たなくてはならないということにもなりますね。温泉に入ってからも、帰りのバスの時間を気にしたりして、ちょっと落ち着かないかなとも思います。
1番にアクセスを挙げると、たぶん住んでいる地域によって、イチオシ温泉などというのも変わってくるのかなぁと思ったりして。私は東京の多摩地区の住人なので、ここら辺の日帰り温泉を基準にしてしまいます。我が家から一番近いのは、「深大寺温泉湯守の里」っていうやつです。2度ほど行きました。まず、最初は地元から攻めてみようと。しかしながら、近ければいいってもんじゃない! ここは近ければいいという許容範囲を超えてますね。いままで行った温泉の中で、もっとも無愛想でサービス精神がまったくみられないと思うのは私だけではなく、何人かの人が言っています。お風呂は、内湯と露天はあるけれど、小さいし種類も少ないのに料金が高い! そう、重要度2番目はコスパ、です。
平日だったら、850円まで。1,000円と言われると、ちょっと高いなと思います。ただし、そこはお湯次第というところもあるから難しいですね。広くて、いろいろな種類のお湯が楽しめて、ロッカーなどの使い勝手もよく、温泉以外の施設も充実しているなら、そりゃ、1,000円超えるよねと納得してしまうこともありそうです。ちなみに「湯守の里」は、1,200円で、ふざけるな!という感じです(笑)
多摩センターの「極楽湯」やよみうりランドの「丘の湯」などは、クーポン券や回数券などを利用すると、平日550~600円ぐらいだったりするので、小さい温泉ではあるけれど(「丘の湯」は天然温泉“風”だったりもしますが)、コスパ的にはいいんじゃないでしょうかという感じです。ただ、だからかもしれないけれど、平日の夕方なんかに行っちゃったりすると、どっちも子どもが多くて……。これは女湯ならではのことかもしれませんけど。温泉に関しては、イクメンなんて、見たことないぞ!(笑) とくにベビーの入場を規制していないところは、ゼロ歳児まで入っています。赤ちゃんのおしっこなんか汚くはないだろうけど、でも温泉の中で気持ちよさそうにブルルなんてしているのを見ると、おしっこしてないよね? と思ってしまったりして……、出ようかなという気分になりますね(笑)
3番目にやっと、泉質かな。私は関節を痛めているので、関節に効くなんて能書きには惹かれるものはありますが、結局、どこの温泉も同じようなことを謳っていると思いません? 美肌とか。温泉で美肌を作るためには、毎日入って、何年がかりというくらいの覚悟は必要だと思いますが。関節痛や腰痛などには、確かに効果があるのではないかと思います。これは泉質という問題ではなく、たっぷりのお湯に少し長い時間浸かっているということがいいと私は解釈しています。私が受診している整形外科のドクターも、身体のメンテナンスをしてもらっているPTも、時間が取れるなら毎日でも、どんな温泉でも行ったほうがいいと言います。そういう意味では、湯治って、きっと効果があるんだろうなぁ。昔の日本人って、こんなこと考えるなんて、すごいですね!
その他の要素としては、食べるものがおいしいとか、ゆったりした休み処があるとか、岩盤浴があるとか、マッサージが上手とか、いろいろあるかと思いますが、にわか湯めぐりカピバラは、そーゆーところをまったく利用しないので、いまのところ判断保留です。ゲームセンターみたいなのは、いらないような気がするけどなぁ。
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