2020年7月の豪雨で街中心部を流れる川が氾濫し、浸水などの被害が出た日田市の天ケ瀬温泉。
年末で旅館の半数がいまだに営業を再開できていない。
新型コロナウイルス禍による旅行客減に災害が追い打ちをかけ、温泉街の体力を奪った。
復興に向けた動きも鈍く、かつてのにぎわいを取り戻せない悪循環だ。
「GoToトラベル」需要も年末から停止され、地域の担い手たちの苦闘が続く。
「温泉街が生まれ変わるチャンス」 あまがせ女将の会・髙瀬純子会長
県は氾濫した玖珠川の拡幅と川底の掘削を含む改修計画案を示し、住民と協議している。
策定には1年以上かかる見込み。再び被災することへの懸念や、立ち退きが必要になるとの不安もあり、住民間の合意形成が難航する恐れもある。
ポイントは…
・大きな堤防を造れば、個性ある川辺の温泉街の景観を壊す。
・川床の掘削は、川底にある泉源に影響を与える可能性。
・観光客が川遊びができなくなったりする。
天ケ瀬は湯布院、別府と並び『豊後三大温泉』に数えられている。
忘れられたくない。負けたくないとの強い気持ちを持ち続けたいと意気込む。
コロナに災害と苦難の天ヶ瀬温泉。温泉街が生まれ変わるチャンスを掴めるか。
1300年の歴史のある温泉の復興に期待したい。
「温泉街が生まれ変わるチャンス」 あまがせ女将の会・髙瀬純子会長(西日本新聞)
復興への決意~天ケ瀬温泉街(3)
-天ケ瀬温泉街の旅館・ホテルの復興状況は。
「歴史ある天ケ瀬温泉だが、近年でこれほどの被害を受けたことはない。これまで川べりの建物では膝まで水が漬かり、床下浸水したりすることはあったが、橋が流れるほどの被害は初めて。温泉街全体として危機的状況にある」
「私の旅館は高台に位置しているために被害はなかったが、大きな被害を受けた施設は手つかずのところが多い。そもそも玖珠川の河川改修計画が定まっていないことに不安があり、再開のために改修などに踏み切るか、営業をやめるか迷っている。高齢の経営者もいる。借金をしてでも再開を目指すのは大変な決断がいる」
-玖珠川を管理する県から昨年10月、河川改修の説明があった。
「大きな堤防を造れば、個性ある川辺の温泉街の景観を壊してしまう。右岸は山が迫り、左岸はJRの線路が走っているため河川の拡幅も難しいと思うが、それでも建物の立ち退きを求められるのだろうか。誰もが住み慣れた土地であり、それも難しい。流量を増やすための川床の掘削は、川底にある泉源に影響を与える可能性がある。一番の売りである川辺の温泉がなくなったり、観光客が川遊びができなくなったりするのも死活問題だ」
「アイデアはある。堤防を造るにしても川の景色が見通せるような透明板にできないのか。温泉街を流れる水量を減らすために導水路を造り、下流部に直接流すことはできないのか。費用や技術面で素人的な考えかもしれないが、天ケ瀬が生き残っていくために私たちも必死に考えている」
「地元住民にはさまざまな考えがある。意見がまとまることはないかもしれない。最後はみんなの思いをくみ取り、最善の方策を国や県が決めるしかない。費用がないなら、アイデアを出してほしい」(引用ここまで)